台湾に来て最初に戸惑ったのは、住所の読み方よりも住所の形そのものだった。Google Maps や Uber に住所を入力すると、日本語の感覚では「番地」のあたりに「段」「巷」「弄」「號」という漢字が並ぶ。どれが道路名で、どれが番号で、どこからどこまでを相手に伝えればよいのか、最初の頃は毎回迷っていた。
日本の住所は「丁目・番・号」で区切るイメージが強いが、台湾は「路や街 → 段 → 巷 → 弄 → 號 → 樓 → 室」と、細かい階層で住所が組み立てられる。とくに「段」は長い道路を区切る単位、「巷」と「弄」は路地の大きさの違い、「號」は建物番号という役割分担がある。
自分も最初は「中山北路一段53巷8弄12號」を見て、53が道路名なのか番地なのかわからなかった。配達アプリで住所をコピペしてもドライバーから電話が来ることがあり、どこまでを読み上げればよいのかを覚えるのに時間がかかった。今回は台湾の住所でよく出てくるこの四つについて、読み方・意味・Uberや配達での使い方を整理しておきたい。
※例文の音声は macOS の台湾華語音声(美佳 / Meijia)で生成した読み上げです。実際の会話の速さや話し方とは少し違います。
先に結論だけ
台湾の住所は、大きい順に次のように並ぶことが多い。
- 路 / 街=道路名(例:中山北路、忠孝東路)
- 段(duàn)=長い道路の区切り。日本語でいう「○丁目」に近い
- 巷(xiàng)=路地、細い道。本通りから分岐する巷
- 弄(lòng)=さらに細い路地。巷の中の弄
- 號(hào)=建物番号
迷ったら、住所を左から順にそのまま読めばだいたい通じる。Uber や foodpanda では全文をコピペし、電話が来たら「巷」「弄」「號」の数字をはっきり言うのが近道である。
段(duàn)=長い道路の区切り
「段」は、一本の長い道路を番号で区切ったときに使う。台北の中山北路や忠孝東路のように、市区を縦断するような大通りには「一段」「二段」「三段」と続く。
中山北路
中山北路(Zhōngshān Běi Lù)=中山北道路
「一段」は yī duàn、「二段」は èr duàn と読む。数字のあとに「段」が来る。日本語の「○丁目」と似ているが、台湾では「丁目」という字は使わない。
中山北路一段
中山北路一段(Zhōngshān Běi Lù yī duàn)=中山北路1区間
同じ「中山北路」でも、一段と二段では位置がかなり離れる。地図アプリで検索するとき、「中山北路」とだけ入れて近い場所を選んでしまうと、数キロずれることがある。必ず「一段」「二段」まで含める。
短い道路や区画のない路には「段」が付かないことも多い。「段」がないからといって住所が不完全というわけではない。道路の長さや行政上の区分によって付くかどうかが決まる。
巷(xiàng)=本通りから入る路地
「巷」は、大通りから分岐する細い道を指す。日本語の「路地」や「横丁」に近い。住所では数字が前に付く。
53巷
53巷(53 xiàng)=53番路地
「巷」の読みは xiàng。日本の「巷(こう)」と同じ漢字だが、台湾華語では第四声で読む。53巷8弄12號のような住所では、53巷が「53番路地に入る入口」のような意味になる。
配達やタクシーでよく困るのは、巷の入口がどこかわからないことである。Google Maps では建物の位置はピンで合っていても、車が入れる入口が別の場所にあることもある。ドライバーに電話が来たら「從53巷進去(53巷から入って)」と言えると助かる。
弄(lòng)=巷の中のさらに細い路地
「弄」は巷よりさらに細い路地。住宅地の奥に入っていくイメージである。住所では再び数字が前に付く。
8弄
8弄(8 lòng)=8番弄
「弄」の読みは lòng(第四声)。日本語の「弄(ろう)」とは読みも意味も異なるので、最初は字だけ見て意味を推測しにくい。巷と弄の両方がある住所は、本通り → 巷 → 弄 → 建物、という順で深く入っていく構造になっている。
自分が住んでいたマンションも、中山北路から見ると小さな巷に入り、さらに弄を曲がった先にあった。初日に配達員が「弄口在哪裡(弄の入口はどこ?)」と聞いてきて、何を聞かれているのかわからずに固まった記憶がある。
號(hào)=建物番号
「號」は建物の番号。日本の「番地」に最も近い部分である。
12號
12號(12 hào)=12番
12號3樓(12番3階)、12號之2(12番の2)のように、樓(階)や之(枝番)が続くこともある。foodpanda や Uber Eats では「號」と「樓」まで入力欄が分かれているアプリも多い。
「號」の読みは hào(第四声)。数字を口頭で伝えるときは、台湾華語の数字の読み方(し、に、さん…ではなく yī、èr、sān…)で一桁ずつ言うことが多い。12號なら「十二號」でも「一二號」でも通じるが、電話ではゆっくり「一二號」と言ったほうが聞き取られやすい。
住所を一つに組み立てる
四つを並べると、次のような形になる。
台北市中山區中山北路一段53巷8弄12號
台北市・中山区・中山北路1区間・53路地・8弄・12番
左から順に、市 → 区 → 路名 → 段 → 巷 → 弄 → 號 と読んでいけばよい。日本語に直訳するより、中国語の順序のまま覚えたほうが実用的である。
我住在中山北路一段53巷8弄12號。
私は中山北路一段53巷8弄12号に住んでいます。
友人に住所を教えるときも、この順番で言えばだいたい伝わる。地図アプリに貼るときは、全文をコピーしてそのまま検索欄に入れる。
日本の住所との違い
日本では「東京都渋谷区道玄坂1-2-3」のように、ハイフン区切りで丁目・番・号を表す。台湾では漢字そのものが区切り記号の役割を果たす。
- 日本の丁目 ≒ 台湾の段(ただし「段」は長い道路にだけ付く)
- 日本の番 ≒ 台湾の巷や弄(路地の階層)
- 日本の号 ≒ 台湾の號
「一段」を「第一丁目」と日本語訳して覚える方法もあるが、現地では誰も「丁目」とは言わない。Uber のドライバーに「一段、一段!」と言うほうが通じる。
また台湾には「里」「鄰」といった更小さな行政区画名が住所に含まれることもあるが、日常の配達やタクシーでは路名から號までで足りることがほとんどである。
Uber・配達アプリでの使い方
台湾で Uber や foodpanda、Uber Eats を使うとき、住所入力は次の三点を押さえるとトラブルが減る。
1. 住所は全文コピペする
アプリの住所欄には、Google Maps や公式サイトから取得した住所をそのまま貼る。自分で「53巷」を省略したり、「一段」を抜いたりすると、ピンがずれる原因になる。
2. 備註欄に入口の情報を書く
マンション名、巷の入口の目印、守衛室の有無などは備註(メモ欄)に書く。台湾のアパートは「某某大樓」「某某公寓」のように建物名が付くことが多く、號だけでは配達員が迷う。
從53巷進去,左手邊。
53巷から入って、左手です。
3. 電話が来たら数字をはっきり言う
ドライバーや配達員から電話が来るのは珍しくない。特に「巷」「弄」の数字は聞き返されることが多い。
53巷8弄12號。
53巷、8弄、12番です。
焦ると日本語が混ざるが、数字と「巷」「弄」「號」だけでもだいたい伝わる。ゆっくり一語ずつ繰り返す。
道を聞く・場所を伝えるフレーズ
住所の読み方がわかると、道を聞く場面でも役に立つ。
請問青松道在哪裡?
すみません、青松道はどこですか?
在哪裡?
どこですか? / どこにありますか?
怎麼走?
どうやって行きますか?
「請問…在哪裡?」と「…怎麼走?」はセットで覚えると便利である。前者は場所の確認、後者は行き方の説明を求める。
自分の住所を伝えるときは、
我住在中山北路一段,從53巷進去。
中山北路一段に住んでいます。53巷から入ってください。
のように、路名+段+巷の入口まで伝えると、相手がイメージしやすい。
よくある間違い
- 「段」を省略する:中山北路と中山北路一段は別の場所。必ず確認する。
- 巷と弄を逆に読む:数字の小さいほうが本通りに近い。53巷の中の8弄、という順序。
- 「號」を日本語の「号(ごう)」で読む:台湾華語では hào。第四声。
- 弄を「なにわ」などと読む:lòng と覚える。日本語の音読みとは無関係。
- 建物名を伝えない:號まで合っていても、マンション名がないと配達が遅れることがある。
自分も最初、foodpanda の備註欄を空欄のままにしていて、配達員が「你在几楼(何階?)」と聞いてくるたびに慌てていた。号・樓・室までセットで伝える癖をつけると楽になる。
読み上げの練習
住所は見るより読む練習が必要である。特に電話口では、次のリズムで言うと相手もメモしやすい。
- 路名+段:中山北路一段
- 巷:53巷
- 弄:8弄
- 號:12號
- 樓・室(あれば):3樓之2
息継ぎなしで全部言おうとせず、巷・弄・號のところで少し間を置く。相手が「几巷?(何巷?)」と聞いたら、その部分だけ繰り返せばよい。
まとめ
台湾の住所で迷子になりやすいのは、段・巷・弄・號が並ぶ部分である。役割を整理すると次のとおり。
- 段(duàn)=長い道路の区切り。中山北路一段の「一段」
- 巷(xiàng)=本通りから入る路地。53巷
- 弄(lòng)=巷の中の細い路地。8弄
- 號(hào)=建物番号。12號
Uber や配達では住所を省略せず全文入力し、備註に入口や建物名を書く。電話が来たら巷・弄・號の数字をはっきり伝える。道を聞くときは「在哪裡?」「怎麼走?」、自分の場所を伝えるときは「我住在…」から始めればよい。
最初は「53巷8弄12號」の数字の並びに圧倒されるが、左から順に読んでいけば構造はシンプルである。一度声に出して読んでみると、地図アプリのピンと頭の中の住所がつながりやすくなる。自分もそうやって覚えた。

