台湾で体調を崩したとき、病院や診療所に行くと「掛號」「看診」「健保卡」といった言葉が次々と飛び出してくる。看板や自動受付機、受付スタッフの声、診察室の呼び出し——どれも中文なので、日本語だけでは一歩も進めない。自分も最初、風邪で近所の診所に入っただけで、何をどこで言えばよいのかわからず、受付の前で固まった記憶がある。
台湾の医療は、健保(全民健康保険)に加入していれば比較的安く受診できる。ただし、受付の流れや言葉遣いは日本とかなり違う。日本では「受付」「診察」「保険証」と言う場面が、台湾では「掛號」「看診」「健保卡」になる。旅行者や短期滞在者は健保卡を持っていないので、「自費」で扱われることも多い。
今回は、病院・診所で実際に耳にする中文を、自分が困った経験も交えながら整理する。掛號から看診、健保卡の確認、等候・領藥まで、現場でそのまま使えるフレーズを音声付きでまとめておきたい。
※例文の音声は macOS の台湾華語音声(美佳 / Meijia)で生成した読み上げです。実際の受付や看護師の速さ・話し方とは少し違います。
先に結論だけ
台湾の病院・診所で覚えておきたい基本語は次のとおり。
- 掛號(guà hào)=受付・受付番号を取ること
- 看診(kàn zhěn)=診察を受けること
- 健保卡(jiàn bǎo kǎ)=台湾の健康保険証
- 等候(děng hòu)=待合・お待ちください
- 領藥(lǐng yào)=薬を受け取ること
- 自費(zì fèi)=保険適用外・自己負担で払うこと
受付では「我要掛號」と言えば診察の受付が始まる。健保卡を持っている人はカードを出し、持っていなければ「沒有健保卡」と伝える。診察室では「哪裡不舒服?」と症状を聞かれるので、どこが痛いかを中国語で答えられるとスムーズである。
掛號(guà hào)=受付・番号取り
「掛號」は台湾の病院・診所で最もよく見る語の一つ。字面は「番号を掛ける」だが、実際の意味は「受付して診察の順番を取る」ことである。日本の「受付」「番号取り」に相当する。
入口付近や自動受付機、案内板に「掛號處(受付)」「掛號櫃台(受付カウンター)」と書いてある。初診の場合は窓口で「我要掛號」と言えば、スタッフが診療科や必要書類を案内してくれる。
我要掛號。
受付をお願いします。 / 診察の番号を取りたいです。
大きな病院では、自動掛號機(セルフ受付機)で操作することも多い。画面に「掛號」「退掛(受付取消)」「繳費(会計)」などのボタンが並ぶ。初めて使うと戸惑うが、基本は「掛號」を押して健保卡をかざすか、自費を選ぶ流れである。
自分が最初に診所に行ったとき、受付の人に「要掛號嗎?」と聞かれて、何を聞かれているのかわからずにうなずいてしまった。後から知ったが、「要掛號嗎?」は「受付しますか?」という意味で、診察を受けたいなら「要(はい)」と答えればよい。
再診の場合は、前回と同じ診療科なら自動機で「複診(再診)」を選ぶだけで済むこともある。迷ったら窓口で「我要掛號」と言ってしまえば、スタッフが案内してくれる。
看診(kàn zhěn)=診察を受ける
「看診」は「診察を受ける」「医者に見てもらう」という意味。掛號が終わると、看診室(診察室)で待つことになる。案内板や呼び出し画面に「看診中」「看診室」「候診(診察待ち)」といった表示が出る。
日本語の「診察」に近いが、台湾では「看診する/看診を受ける」と言う。受付が終わったあと、スタッフから「请到○○診看診(○○診で診察を受けてください)」と案内される。
診察の流れはおおむね次のとおり。
- 掛號(受付・番号取り)
- 量血壓(血圧測定)・量體重(体重測定)——大きな病院では看護師が行う
- 等候(待合室で待つ)
- 看診(診察室で医者と話す)
- 繳費(会計)
- 領藥(薬局で薬を受け取る)
小さな診所では、受付 → 待合 → 診察 → 会計 → 薬局が一つのフロアで完結することも多い。大きな総合病院では、掛號・看診・領藥が別フロアにあるので、案内板の「看診室」「藥局」を確認しながら動く。
健保卡(jiàn bǎo kǎ)=健康保険証
「健保卡」は台湾の全民健康保険(NHI)の保険証。ICカード形式で、病院や診所の受付でかざすと保険情報が読み取られる。日本の健康保険証に相当するが、台湾ではほぼすべての医療機関でこのカードが前提になっている。
受付では必ずと言っていいほど「有健保卡嗎?」と聞かれる。
有健保卡嗎?
健保卡はお持ちですか?
カードを持っている人は「有(あります)」と答えてカードを渡す。自動受付機ではカードリーダーにかざすだけで、掛號手続きが進む。
旅行者、短期滞在者、健保に未加入の人は健保卡を持っていない。正直に伝えればよい。
沒有健保卡。
健保卡はありません。
この場合、自費(保険適用外)で診察を受けることになる。料金は健保加入者より高くなるが、台湾の医療費は日本と比べるとそれでも安い部類である。パスポートや在留カードを見せるよう求められることもある。
自分の場合、最初の受診で「沒有健保卡」と言ったあと、「那自費喔(では自費ですね)」と確認された。自費であることを了承すれば、そのまま看診に進める。料金が心配なら、掛號の前に「自費多少錢?(自費だといくら?)」と聞くこともできる。
自費(zì fèi)=保険適用外・自己負担
「自費」は文字どおり「自分で費用を負担する」という意味。健保卡がない人、または健保の給付対象外の検査・薬を選んだ場合に使われる。
受付や会計で「自費」という言葉が出てきたら、保険が使えず全額自己負担ということ。日本語でいう「自費診療」「保険適用外」と同じ感覚である。
診察後の会計では、健保卡をかざすと自己負担分だけが表示される。自費の場合は「自費○○元」と伝えられる。現金、信用卡(クレジットカード)、悠遊卡などで支払える病院が多い。
旅行者向けのクリニックや観光地の診所では、最初から自費前提で案内してくれることもある。英語や日本語が通じる場所もあるが、基本の確認は中文で行われるので、「自費」という語だけは覚えておくと安心である。
哪裡不舒服(nǎ lǐ bù shū fu)=どこが具合悪い?
診察室に入ると、医者や看護師から「哪裡不舒服?」と聞かれる。これは「どこが具合悪いですか?」「どこが痛いですか?」という意味で、台湾の診察で最もよく使われる症状確認のフレーズである。
哪裡不舒服?
どこが具合悪いですか? / どこが痛いですか?
「不舒服(bù shū fu)」は「気分が悪い」「具合が悪い」という広い意味。頭痛、腹痛、咳、発熱など、具体的な症状を伝えるときの入り口になる。
答え方の例:
- 頭痛(tóu tòng)=頭痛
- 肚子痛(dù zi tòng)=お腹が痛い
- 發燒(fā shāo)=熱がある
- 咳嗽(ké sou)=咳が出る
- 喉嚨痛(hóu lóng tòng)=のどが痛い
我頭痛,還有點發燒。
頭が痛くて、少し熱もあります。
中文が不安なときは、痛い場所を指しながら「這裡(ここ)」と言うだけでも伝わる。スマホの翻訳アプリを見せる方法もあるが、「哪裡不舒服?」と聞かれたら、まずは体の部位を中国語で一語答える練習をしておくと診察が早く進む。
自分は最初、「不舒服」だけ聞き取れて、何を答えればよいかわからなかった。後から「哪裡(どこ)」+「不舒服(具合悪い)」のセットだと知り、次からは「頭痛」だけでも伝えられるようになった。
等候(děng hòu)=待合・お待ちください
「等候」は「待つこと」「お待ちください」という意味。病院の案内板、呼び出しモニター、スタッフの口頭案内で頻繁に出てくる。
「請到候診區等候(診察待ちエリアでお待ちください)」「請耐心等候(しばらくお待ちください)」のように使われる。受付後に番号が呼ばれるまで、等候區(待合室)で待つ流れが一般的である。
モニターには「現在看診號:015」「您的號碼:023」のように表示され、自分の番号が近づくと「請023號到○診看診」とアナウンスされる。日本の病院の番号呼び出しと同じ感覚で、番号と「看診」をセットで覚えておくとよい。
「还要等多久?(あとどれくらい待ちますか?)」と聞きたくなる場面もあるが、混雑時はスタッフも忙しい。モニターの表示を見ながら静かに等候するのが基本である。
領藥(lǐng yào)=薬を受け取る
診察と会計が終わると、最後に薬局で薬を受け取る。「領藥」は「薬を受け取る」という意味で、案内板やレシートに「請至○樓藥局領藥(○階の薬局で薬を受け取ってください)」と書いてある。
「取藥(qǔ yào)」とも言う。意味はほぼ同じで、病院によって表記が異なるだけ。どちらも「薬局で薬をもらう」場面で使われる。
薬局の窓口では、健保卡や番号札、会計のレシートを見せる。スタッフが薬の飲み方を説明してくれることがある。「一天三次,飯後吃(1日3回、食後に服用)」のような説明は、中文が読めなくても、ジェスチャーと数字でだいたい理解できる。
薬局が混んでいる時間帯は、領藥也要等(薬の受け取りも待ち)になる。会計が終わったら、案内された薬局へ向かい、番号が呼ばれるまで等候すればよい。
病院での会話例
近所の診所で風邪の診察を受ける場合の流れ。
自分:我要掛號。
受付をお願いします。
スタッフ:有健保卡嗎?
健保卡はお持ちですか?
自分:沒有健保卡。
持っていません。
スタッフ:好,自費。請坐,等候叫號。
わかりました、自費ですね。お座りになって、番号が呼ばれるまでお待ちください。
しばらく待つと、診察室に呼ばれる。
医者:哪裡不舒服?
どこが具合悪い?
自分:喉嚨痛,有點咳嗽。
のどが痛くて、少し咳が出ます。
診察後、会計を済ませて薬局へ。
案内:請到一樓藥局領藥。
1階の薬局で薬を受け取ってください。
この一連の流れで、「掛號 → 健保卡確認 → 等候 → 看診 → 哪裡不舒服 → 自費会計 → 領藥」という語がすべて出てくる。一度体験すると、次からは各場面で何を言えばよいかイメージしやすくなる。
よくある間違い
- 「掛號」を「かける番号」とだけ覚える:受付全体を指す語。受付で「我要掛號」と言えばよい。
- 健保卡がなくても黙っている:「沒有健保卡」と正直に言わないと、会計でトラブルになることがある。
- 「看診」を「診察室の名前」だけだと思う:動詞としても使う。「看診を受ける=診察する」。
- 「哪裡不舒服」に長文で答えようとする:最初は「頭痛」「肚子痛」など一語で十分。
- 「領藥」と「取藥」を別の場所だと思う:どちらも薬局で薬をもらうこと。表記の違いだけ。
自分も最初、健保卡の有無を聞かれて「有…?」と曖昧に答えてしまい、後から自費で処理し直す羽目になった。わからなければ「沒有健保卡」とはっきり言うほうが双方にとってスムーズである。
まとめ
台湾の病院・診所で押さえる中文は、次の七つに集約できる。
- 掛號(guà hào)=受付・番号取り。「我要掛號」で始める
- 看診(kàn zhěn)=診察を受ける
- 健保卡(jiàn bǎo kǎ)=健康保険証。なければ「沒有健保卡」
- 自費(zì fèi)=保険適用外の自己負担
- 哪裡不舒服(nǎ lǐ bù shū fu)=どこが具合悪い?症状を伝える
- 等候(děng hòu)=待合・お待ちください
- 領藥(lǐng yào)=薬局で薬を受け取る
体調を崩したときに中文で受付から診察、薬の受け取りまで進めるには、この語彙だけでもだいぶ助かる。最初は「我要掛號」と「沒有健保卡」の二つだけ覚えておき、診察室で「哪裡不舒服?」と聞かれたら痛い場所を一語答える——それだけで最低限の受診は回せる。
自分も最初の受診ではかなり緊張したが、一度流れを体験すると、次からは案内板の漢字がだんだん読めるようになった。音声を聞きながら、声に出して練習してみてほしい。

