台湾の夜市に行くと、香りと音と人の流れが一気に押し寄せてくる。鹹酥雞の揚げたての匂い、臭豆腐の独特な香り、人だかりの前で店主が次々と注文を受けている光景。日本語だけだと「あれください」と指差しで済ませてしまうことも多いが、中文が少しわかるようになると、味付けや食べ方まで自分好みに頼めるようになる。
夜市の小吃(シャオチー、屋台料理)は、コンビニのレジとはまた違う。店員が「辣嗎?」「內用還是外帶?」と聞いてくる。自分が食べられないものを入れないでほしい、辛さを調整したい、持ち帰りたい、小さく切ってほしい——そういう要望を伝えるフレーズが、注文の現場では毎日のように出てくる。
自分は香菜(パクチー)が苦手で、最初の頃は毎回「不要香菜」と言いたいのに、緊張して黙って受け取っていた。あとから箸で避けながら食べる羽目になった。少しずつ覚えたのが「不要香菜」「不要蔥」「不要辣」「少辣」「加蛋」「切小」「打包」「內用」「外帶」あたりの短い言い方である。今回は夜市や小吃屋で実際に使える注文フレーズを、意味と使いどころごとに整理しておきたい。
※例文の音声は macOS の台湾華語音声(美佳 / Meijia)で生成した読み上げです。実際の店主の速さや話し方とは少し違います。
先に結論だけ
- 不要香菜(bù yào xiāngcài)=パクチーは入れないで
- 不要蔥(bù yào cōng)=ネギは入れないで
- 不要辣(bù yào là)=辛くしないで
- 少辣(shǎo là)=少なめの辛さで
- 加蛋(jiā dàn)=卵を追加
- 切小(qiē xiǎo)=小さく切って
- 打包(dǎ bāo)=持ち帰り用に包んで
- 內用(nèi yòng)=店内で食べる
- 外帶(wài dài)=持ち帰り
- 我要這個(wǒ yào zhè ge)=これをください
夜市では長い説明より、短いフレーズを並べるほうが自然である。「一份滷味,不要香菜,少辣,打包」のように、品目+要望を続けて言えばだいたい通じる。迷ったら、まず「不要香菜」「不要辣」「打包」の三つだけ覚えておくと、かなり助かる。
不要香菜・不要蔥:嫌いな具材を外す
台湾の屋台料理では、仕上げに香菜や蔥を振りかける店が多い。麵類、滷味、某些の湯品、一部の炒め物など。見た目は彩り豊かだが、香菜が苦手な人にとっては「知らないうちに入っていた」が一番つらい。
香菜は日本語でいうパクチー(コリアンダー)。台湾では「香菜(xiāngcài)」と呼ぶ。不要の言い方は、コンビニやレジで使う「不用」とは少し違い、注文の現場では「不要〜」がよく使われる。
不要香菜。
パクチーは入れないで。
ネギ系が苦手な場合は「不要蔥」。蔥(cōng)は長ネギや青ネギに近いもので、滷味や麵の薬味としてよく使われる。
不要蔥。
ネギは入れないで。
自分が最初に覚えたのは「不要香菜」だった。夜市の鹹酥雞屋で、揚げたてを受け取ったあとに上から香菜が降ってきて、内心「言えばよかった」と後悔した。それ以降、注文の最初か最後に必ず一言添えるようにした。
両方不要なら、続けて言えばよい。
不要香菜,不要蔥。
パクチーもネギも入れないで。
店員が忙しい時間帯でも、この短い並べ方なら聞き取ってもらえる。日本語でいう「抜きで」に相当する感覚である。
不要辣・少辣:辛さの調整
台湾の夜市は、見た目以上に辛いことがある。麻辣、胡椒、辣油、特製沾醬など、店によって「辛いのが当たり前」なものも多い。日本で育った舌には、最初は「少辣」ですら結構辛く感じることもある。
完全に辛くしたくないなら「不要辣」。
不要辣。
辛くしないで。
少しだけ辛みが欲しい、または「普通より控えめ」にしてほしいなら「少辣」。
少辣。
少なめの辛さで。
夜市では「辣嗎?」と聞かれることもある。そういうときは「不要辣」か「少辣」で答えればよい。自分は最初、「辣」だけ聞き取れて「はい?」と返してしまい、結果的に思っていたより辛いものが来た経験がある。辣(là)は「辛い」、不要(bù yào)は「要らない」、少(shǎo)は「少し」という覚え方で十分である。
さらに辛さの段階を細かく言いたい場合は、店によって「微辣」「中辣」「大辣」などもあるが、初心者は「不要辣」と「少辣」の二択だけ先に覚えておけば、だいたいの屋台で困らない。
加蛋:定番のトッピング追加
台湾の小吃では、卵を追加できるメニューが非常に多い。滷肉飯に半熟卵、麵類に滷蛋、某些の炒飯や便當で「加蛋」が選べる。値段は十から二十元程度のことが多く、満足度が上がりやすい。
加蛋。
卵を追加。
注文の仕方はシンプルで、品目のあとに「加蛋」と言うだけ。
一碗滷肉飯,加蛋。
滷肉飯一つ、卵追加。
「加」は「足す」、「蛋」は「卵」。夜市の定番メニューでは、最初から卵入りの名前になっているもの(例如滷蛋、半熟蛋)もあるので、メニュー表示を見てから「加蛋」が必要か判断するとよい。自分は滷肉飯に加蛋する組み合わせをかなり気に入っている。
切小:食べやすくしてもらう
「切小」は、塊状のものを小さく切ってほしいときに使う。鹹酥雞、雞排、某些の滷味、大きめの食べ物全般で便利である。歩きながら食べる夜市では特に重宝する。
切小。
小さく切って。
切(qiē)は「切る」、小(xiǎo)は「小さい」。「切小一点」まで言うと「もう少し小さく」というニュアンスになるが、夜市では「切小」だけで十分通じる。
一份鹹酥雞,切小。
鹹酥雞一つ、小さく切って。
自分がこれを覚えたのは、巨大な雞排を両手で持って食べていたら、ソースが手首まで届いたときだった。それ以降、大きい揚げ物は迷わず「切小」を付ける。串に刺さった状態で渡される店もあるが、切ってもらえる店では食べやすさが段違いになる。
打包・內用・外帶:食べ方と持ち帰り
夜市には「その場で食べる店」と「持ち帰る店」が混在している。麵店や座って食べる小吃屋では、最初に「內用還是外帶?」と聞かれることがある。
店内で食べるなら「內用」。
內用。
店内で食べます。
持ち帰るなら「外帶」。
外帶。
持ち帰り。
「打包」は、できあがった料理を持ち帰り用の容器や袋に包んでほしいという意味でも使う。夜市の揚げ物屋や滷味屋でよく聞く。
打包。
持ち帰り用に包んで。
內用(nèi yòng)は文字どおり「内部で使用」、外帶(wài dài)は「外に持っていく」、打包(dǎ bāo)は「包みを作る」というイメージ。コンビニや飲食店でも同じ語が使われるので、夜市以外でも役に立つ。
自分が最初に混乱したのは、「外帶」と「打包」の違いだった。実際の会話ではかなり interchangeable で、持ち帰り希望ならどちらを言っても店員は理解してくれる。聞かれたら「外帶」、注文の最後に添えるなら「打包」、と覚えておくとよい。
我要這個:指差し注文の基本
夜市のメニュー板は中文だけ、写真だけ、または看板が小さすぎて読めないことも多い。そんなときに使えるのが「我要這個」である。指差しながら「これをください」と伝える、いちばん実用的なフレーズの一つ。
我要這個。
これをください。
「我要」は「欲しい」、「這個」は「これ」。数量を言いたいなら「一份」や「兩個」を前に付ける。
我要這個,一份。
これを一つください。
このあとにカスタマイズを続けると、かなり自然な注文になる。
我要這個,不要香菜,少辣,打包。
これをください。パクチーなし、少なめの辛さ、持ち帰りで。
自分は中文が不安な頃、まず「我要這個」で品目を確定し、続けて「不要香菜」「打包」と短いフレーズを足すやり方でかなり助けられた。
夜市での注文の組み合わせ例
鹹酥雞屋で、歩きながら食べたい場合。
一份鹹酥雞,切小,不要辣,打包。
鹹酥雞一つ、小さく切って、辛くしないで、持ち帰りで。
滷味屋で、香菜とネギを抜きたい場合。
這個跟這個,不要香菜,不要蔥,少辣。
これとこれ、パクチーなし、ネギなし、少なめの辛さ。
麵店で、店内で食べる場合。
一碗牛肉麵,內用,不要香菜。
牛肉麵一つ、店内、パクチーなし。
滷肉飯に卵を追加して持ち帰る場合。
一碗滷肉飯,加蛋,外帶。
滷肉飯一つ、卵追加、持ち帰り。
夜市の注文は、長い文法より「品目+短い要望の連続」で成立している。店員も忙しいので、短くはっきり言うほうが双方にとって楽である。
まとめ
台湾の夜市・小吃で注文するとき、次の短いフレーズだけ覚えておくと、味付けや食べ方まで自分で選びやすくなる。
- 不要香菜 / 不要蔥:嫌いな薬味を抜く
- 不要辣 / 少辣:辛さを調整する
- 加蛋:定番の卵トッピング
- 切小:食べやすく切ってもらう
- 打包 / 外帶 / 內用:持ち帰りか店内か
- 我要這個:指差し注文の基本
「一份〜,不要香菜,少辣,打包」のように、品目のあとに要望を並べるだけで、だいたいの屋台で通じる。自分が香菜で何度も後悔した経験から言うと、最初のうちは遠慮せず「不要香菜」と言ったほうが、台湾の夜市をずっと楽しめる。
次に夜市へ行ったら、一つだけでいいので声に出してみてほしい。短い中文でも、自分好みの一碗や一串をもらえるようになると、夜市の楽しさはかなり変わると思う。

