台湾で生活し始めると、最初に何度も耳にする謝罪っぽい言葉が「不好意思」である。道を聞くとき、店員に声をかけるとき、少し遅れそうなとき、断るとき。場面が違うのに同じ二文字が出てくる。
教科書では「對不起」も「すみません」や「ごめんなさい」として出てくるし、LINEでは「抱歉」という文字もよく見かける。日本語にするとどれも「すみません」に吸収されがちなので、いつどれを使えばよいのかわからなくなる。
自分も最初は全部「對不起」で済ませようとしていたが、軽い場面で使うと少し重く聞こえたり、逆にちゃんと謝る場面で「不好意思」だけだと足りない感じがしたりした。今回は台湾でよく使うこの三つについて、場面ごとに整理しておきたい。
※例文の音声は macOS の台湾華語音声(美佳 / Meijia)で生成した読み上げです。実際の会話の速さや話し方とは少し違います。
先に結論だけ
- 不好意思(bù hǎo yì si)=軽い謝罪、呼びかけ、お願い、断り。日本語の「すみません」に近い万能語
- 對不起(duì bu qǐ)=明確に謝るとき。相手に実害や迷惑をかけたときの「ごめんなさい」
- 抱歉(bào qiàn)=ややフォーマルな遺憾・謝罪。メールや仕事、丁寧に断るときに多い
迷ったら日常はまず「不好意思」。明らかに自分が悪いときは「對不起」。文章や仕事では「抱歉」も使える、くらいの感覚でだいたい困らない。
不好意思は謝罪専用ではない
「不好意思」を字面どおり読むと「良い意味ではない」になり、何を謝っているのかわかりにくい。台湾ではむしろ、相手の注意を引いたり、少しお願いしたり、断るときのクッションとしてよく使われる。
英語でいうと Excuse me に近く、日本語だと「すみません」の中でも謝罪というより前置きや気遣いの部分に相当する。
道を聞くとき。
不好意思,請問捷運站怎麼走?
すみません、MRTの駅へはどうやって行きますか?
人混みで通してもらうとき。
不好意思,借一下。
すみません、ちょっと通してください。
話の途中で割り込むとき。
不好意思,打扰一下。
すみません、少しよろしいですか。
このあたりはまだ誰にも大きな実害を与えていない。これから相手の時間や空間を少し借りるので、先にクッションを置いている感じである。
軽い失敗にも不好意思
少し遅れた、注文を聞き返してしまった、名前を聞き逃した、といった小さな場面でも「不好意思」はよく出る。
不好意思,我晚到了。
すみません、少し遅れました。
不好意思,麻煩你了。
すみません、お手数をおかけしました。
断るときにも使える。
不好意思,今天不行。
すみません、今日は無理です。
日本語でも断るときにいきなり「できません」と言うより「すみません、今日は…」と前置きすることが多い。台湾でもその役割を「不好意思」が担っている。
台湾に来てすぐの頃、道を聞こうとして頭の中で「對不起,請問…」と組み立てていたが、周りの人はほぼ「不好意思」から始めていた。呼びかけや軽い依頼では「對不起」より「不好意思」のほうが自然だと感じるようになった。
對不起はちゃんと謝るとき
「對不起」は相手に実害や迷惑をかけてしまったときの謝罪に近い。ぶつかった、約束を忘れた、間違って相手のものを触った、など原因と結果がはっきりしているときに使う。
對不起,我不是故意的。
ごめんなさい、わざとではありません。
對不起,我忘了。
ごめんなさい、忘れていました。
對不起,是我弄錯了。
ごめんなさい、私が間違えました。
もっと強く謝りたいときは強調語を足す。
真的很對不起。
本当に申し訳ありません。
對不起,請原諒我。
ごめんなさい、許してください。
店の入口で店員に声をかけるときに「對不起」と言うと、なにか悪いことをした人のように聞こえることがある。道を開けるお願いなら「不好意思」、足を踏んでしまったなら「對不起」、くらいの差だと思う。
抱歉は少し改まった遺憾
「抱歉」は「對不起」ほど重くはないが、「不好意思」よりは改まった響きがある。口頭でも使うが、仕事のメッセージやメール、予定変更の連絡ではかなりよく見る。
抱歉,我遲到了。
申し訳ありません、遅刻しました。
抱歉,我今天沒辦法去。
申し訳ありません、今日は行けません。
抱歉,回覆晚了。
申し訳ありません、返信が遅くなりました。
友達同士の雑談なら「不好意思」で十分な場面でも、同僚や取引先には「抱歉」のほうが落ち着いて見えることがある。自分はLINEで仕事の返信が遅れたときに「抱歉」を使うことが増えた。口頭で慌てて謝るときは今でも「不好意思」か「對不起」のほうが出やすい。
三つを並べてみると
- 道を聞きたい:不好意思
- 少し遅れた:不好意思 / 抱歉
- 約束をすっぽかした:對不起 / 抱歉
- 人にぶつかった:對不起
- 誘いを断る:不好意思 / 抱歉
- 仕事の返信遅れ:抱歉
同じ「遅れ」でも、友達とのカフェなら「不好意思,我晚到了」、仕事の打ち合わせなら「抱歉,我遲到了」、重要な約束をすっぽかして相手に実害が出たなら「對不起」寄りになる。謝る対象と深刻さで言葉が動く。
日本語の「すみません」は呼びかけにも謝罪にも断りにも使えるので便利だが、台湾華語ではその仕事を主に「不好意思」が引き受け、「對不起」はもう少し責任の所在がはっきりした謝り方になっている。
返ってきたときの答え方
相手に謝られたときは、状況に応じて次のような返答がある。
- 沒關係。=大丈夫です
- 沒事。=問題ないです、気にしないで
- 不用道歉。=謝らなくて大丈夫です
軽いぶつかり合いなら「沒事」や「沒關係」で終わることが多い。自分が謝る側のときは、相手が「沒事」と言ってもう一度深く謝り続けると、かえって場が重くなることもある。一度きちんと言って、相手が流したら流す。
短い会話で確認してみる
夜市で後ろの人に当たってしまった場合。
A:對不起,我不是故意的。
ごめんなさい、わざとではありません。
B:沒事。
大丈夫です。
カフェで道を聞く場合。
A:不好意思,請問捷運站怎麼走?
すみません、MRTの駅へはどうやって行きますか?
仕事のLINEで返信が遅れた場合。
A:抱歉,回覆晚了。
申し訳ありません、返信が遅くなりました。
同じ「すみません」でも、ぶつかりは「對不起」、呼びかけは「不好意思」、仕事の遅延は「抱歉」になる。日本語では一つの語で済む場所を、台湾華語では場面ごとに少し分けている。
もちろん境界は絶対ではない。軽い遅刻に「對不起」を使う人もいるし、ぶつかったときに「不好意思」と言う人もいる。ただ、学習者としてはまず「軽い・重い・改まった」の三段階で覚えるほうが実務的だと思う。
まとめ
台湾で毎日のように使うのは「不好意思」。呼びかけ、お願い、軽い失敗、断りまでカバーできるので、まずこれを自然に言えるようになるだけで会話がかなり楽になる。
相手に明確な迷惑をかけたときは「對不起」。仕事や文章で丁寧に遺憾を伝えたいときは「抱歉」。三つとも「すみません」に訳せるが、台湾では場面によって重さが違う。
- 日常のクッション:不好意思
- はっきり謝る:對不起
- 改まって伝える:抱歉
最初から完璧に使い分ける必要はない。迷ったら「不好意思」を使い、明らかに自分が悪いとわかった場面だけ「對不起」に切り替える。そのくらいの運用で台湾の日常はかなり回ると思う。


コメント