英名は “Targeted” の「告発」という、少し前にFacebookのデータを使ったマーケティング手法と個人情報不正取得、選挙操作で世間を騒がせたケンブリッジ・アナリティカの元社員が書いた告発本を読んだので少しまとめたいと思う。
インターネット関連の仕事をしている人は10年以上前から知っていたユーザートラッキングの技術やターゲティングについて政治と新興企業の観点から語られている、温故知新のような書籍でした。インターネットやデジタル分野でのユーザー分析についてあまり詳しくない人は読むと新しい発見があるかもしれない。
告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
この書籍には
学んだこと、覚えておいたほうがよいと思ったことをメモしてみます。
多かれ少なかれマーケティングに携わっている人は読んでおいて損はないかもしれません。
- 昔ながらの広告はブランドを構築し社会的証明を与えるが、行動を変えることはできない (CA のCEO アレクサンダーの言葉)
- 次の世代ではマスメディアによる不特定多数への広告はなくなるだろう (CA のCEO アレクサンダーの言葉)
- 新たな顧客に訴求しようとするのであれば、何をすべきかをただ訴求するのではなく、顧客を変えることを行うべき (CA のCEO アレクサンダーのプレゼン)
- コミュニケーションの究極の目的は、相手の行動を実際に変えること (CA のCEO アレクサンダーの言葉)
- CAは行動変容の代理店である
- 顧客にアプローチするときは、ニーズがあるか、予算があるか、期限があるかを意識すること
- 人を思い通り動かすには、そう動く可能性が高くなる条件を整えることが一番
- 広告より受け取り側の行動原理に視点を移し重視する
- CAの一番の強みはターゲットとなる国民のデータを管理するデータベースの大きさで、全ての米国民の個人情報を買い上げ、または使用許可をとったということに成り立っていた
- 個人情報には買い物履歴や休暇の過ごし方、収入など多岐にわたる
- そういった個人情報に公に知ることができる投票傾向を照らし合わせる
- Facebookでのいいねなどのユーザーのアクションをデータポイントとすると、1ユーザーに関して570個のデータポイントがある
- Facebook以外のSNSなど組み合わせれば18歳以上の米国民2億4000万人にたいして一人ごとに5000のデータポイントがある
- 当時のFacebook上でサードパーティーが開発した性格診断などのアプリでは利用者のつながりである友達の情報も一緒に許可なく送信されていた
- 当時CAを含む4万以上の開発者がこのFacebookのAPIを利用してユーザー情報の収集をしまくった
- 個人情報を収集して売り買いする会社があることを人は知ったほうが良い
- この書籍を購入することでも自分自身の新しいデータセットを生み出してしまったことになる
- 行動心理学、社会心理学を活用したOCEANモデルで個人の性格を細かく分類する (Open Conscientious Extroverted Agreeable Neurotic)
- 膨大なデータをもとに人の行動予測アルゴリズムを開発し、各種SNSプラットフォームで伝えたいメッセージの効果が最大化するように狙う
- 投票において浮動票の存在と数を見極めて、どのようにその浮動票をクライアントに持ってくるように有権者個人個人にメッセージを伝えるか、OCEANモデルで分けた性格の層に別々のメッセージを出しわける
- CAのようなデータ収集と分析で選挙キャンペーンを手掛ける会社はたくさんある
- CA設立当初、民主党側では既にそういった会社が数社存在し選挙活動をしていたため、CAの顧客層は自然と民主党側になった
- コジンスキー氏によると、ここで使われた技術そのものが大量破壊兵器であると言っている
- 彼が構築したユーザー分析モデルを使用すると、個人のFB上でのいいねを68個見るだけで、その人物の非常に具体的な情報がわかるようになる (肌の色、性的指向、支持政党、薬物とアルコールの摂取、両親の揃った家庭か離婚した家庭かなど)
- 70個のいいねでそのユーザーの友人よりもその人物のことがよりわかり、150いいねで親よりも、300いいねでパートナーよりもわかるようになる
… などなど、後半は著者の状況や心境の変化がより多く書かれているのでメモは割愛。著者はかなり活動的にすぐに行動を起こして暗号通貨業界に食い込んでいくのは単純にすごいと思った。こういう人が営業とかビジネス開発に向いてるんだろうなと感じる。
自分の日々の行動がいかにデータセットを生み出しているか、その生み出されたデータを購入して利用する会社がどれだけ多いかを意識したほうがよい。
例えば、買い物で使うポイントカードやクレジットカード、QRコード決済、Google Chrome などのウェブブラウザを使うこと、ウェブサイトを見ること、キンドルで読書すること自体も自分自身の大量のデータポイントを大量に生成することに通じる。
たいていのウェブサイトには Google Analytics のコードが埋め込まれていて訪問者の行動を分析してよりよい効果のための分析に使われるが、最近では Google Analytics とは別のより個人情報に気を使ったトラッキングサービスやソフトウェアも注目されはじめた。例えば以下の Matomo や Fathom など、他にももっと色々ある。
- https://matomo.org/
- https://usefathom.com/
こういう事実を知ると何が自由意志で何が自由意志ではないのかを考えるようになるし、どうせ世界中でこういう感じなら仕組まれた民主主義に意味はあるの?と思うようになってくるのである。
まぁこういう背景もありヨーロッパではGDPRとか、カリフォルニアではCOPRAとか個人データ保護の法律が成立しだして企業は準拠しなければいけなくなったのだが、結局根本的なことはあまり変わっていないのが実情である。
この書籍が告発している内容とは別に新興企業での仕事についてどのようなものかを知ることができる。新興企業で事業開発をする人は読んでおいてもよいかもしれない。
ちなみに、CA が使用していたと思われるウェブサイトのドメイン名は現在、日本の輸入販売業者に使用されているもよう。(ドメイン名の紹介は割愛)
気になった人は読んでみましょう。ビジネス書というより小説として読めます。
告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
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