台湾で初めてのカルチャーショックを受けた話:台湾で新生児の「算命」と坐月子 (産後の肥立ち) のしきたり

生活





台湾で新生児の「算命」をしてきた話

赤ちゃんの名前を決めるために台湾の占い「算命」に行ってきました。出産後の妻は「神様の前で行う算命には行ってはいけない」と妻のお母さんから言われていたのと (日本における穢れの文化に似ている)、坐月子のときは家から出てはいけなかったので私と妻のお姉さん、妻のお母さんの三人で行ってまいりました。

「算命」は中華文化の占星術で、主に生年月日と干支をベースにその人の運命を占うというもので、中国大陸のはるか昔から伝承されているれっきとした学問。

台湾では生まれた赤ちゃんは算命してもらって、算命でおすすめされた名前を付けるのが一般的らしいです。台湾北部に住んでいる若い人や西洋文化や原住民文化で育った台湾人は算命はしないと思いますが、台湾の道教文化に育った大部分の台湾人は算命を受けているらしいです。(が、実際の統計は知りません)

算命を通して人を見ると、その人がどんな運命を辿るのかわかるのでその人がかかりやすい病気とか特徴がわかるようで、私の場合は「心臓が急に動悸が激しくなったり、心臓に負担がかかっているかもしれない」ということを言われたりしました。実際に東京に住んでいた時に動悸の問題があったのでちょっとした検査を受けたりしていたので半信半疑ながらも個人的には「妻と妻の家族がある程度信じているからまぁ従うか」という心構えでした。

算命が始まると、子供の生年月日、生まれた時間、両親の生年月日を伝えます。そうすると老師が色々文字を書き出して、その人の運命を見ていきます。最後に結果が書かれた赤い紙をもらって料金の支払い。今回は日本円で1万円ほどでした。

そして受け取った算命の紙の一部がこちら。

ちょっと見えにくいですが、黄色い丸で囲っている箇所がおすすめされた名前で、私から見ても他の人からみてもどれも結構しぶいというか微妙な感じがします。しかも候補名5つの中の2つも日本では使えない漢字が入っていて使えず。一番左側の草冠に「定」と「軒」はラーメン屋みたい。

漢字の名前は気にしない

ひと通り算命の下準備が整い老師が名前の字を選び始めると、「稚」が最初におすすめされましたが、「”おさない”という意味だからあんまり使いたくない」と伝え、その次に「藝」を最初に進められましたが、しっくりこず。
太陽の「陽」を使いたいと伝えると、「両親の十二支の動物の特徴から子供の字を選ぶんや。両親の十二支の動物が食べるんは草で、子供は牛年やから「草」に関連した部首とか漢字が重要や。牛は太陽が出とうといつも働かされるから太陽は嫌がるねん。せやから陽を使うのは絶対にあかん」(関西弁訳)と言われたりしました。

他に使いたいかもと伝えた「稀」は使っても良いと言われ、最終的に上の赤い紙に書かれている一番おすすめの名前(「秉稀」)と4つほど候補をもらって帰りました。その後家に帰って調べると「秉」は日本では人名では使えず、候補の中に入っていた草冠に「定」軒も日本では使えず、候補が3つになったのですが、他の候補も古めかしいというか少々しぶい、ダサい、というか、この名前にすると親として名前に込められる意味って何なんだ、日本語での読み方どうしよう、となり途方に暮れることに。

最終的には老師が算命の過程で候補として書いていた別の字を組み合わせて (老師に「この漢字使っていい?」と問い合わせました)、算命の結果や画数や今風な感じも踏まえて、個人的には画数や意味、ちょっと今風な名前がいいなと思っていたので、希望に合う名前をつけられたので一件落着でした。うちの妻は伝統を重んじるタイプなのでこんなプロセスになりましたが、同じような状況だったり、台湾人と結婚したけど全然違うプロセスだったという人がいたらどうだったかコメントください。

台湾人の名前はまんべんなく色々な漢字が使われているなぁと不思議に思ったことがあったのですが、理由はおそらくこの「算命」で、親が名前に願いや意味を込める日本と違い、台湾では少なくとも今の20-30代が生まれた頃にはまだまだ算命での命名が主流だったので、普遍的で多種多様な名前になっているのだと思います。

でも上記のような干支に重きをおいた決め方をしていると、同じ年に生まれた子どもたちは全部同じような名前になっちゃわないかと思うのですが、それは算命の老師や名前の候補によっても異なるようです。

名前は後で自由に変えられるから今ベストな名前じゃなくても良い、という認識

※ これは自分の台湾の家族周辺の認識しか知らないので台湾全体を代表していないことにご注意ください。

算命が終わって帰路につく車内でめっちゃ悩んでいる私を見て、私の妻の母は「名前なんて後から変更できるんだから算命で決められた名前つければええねん」というようなことを言われて「じゃあ算命で名前を付ける意義はなんやねん!」となり、ここで日本と台湾での子供の名前の付け方と考え方に大きなギャップを感じて頭が爆発しそうでした。

日本では占いや画数を確認したりするも、両親が子供の将来や理想を考えたりして名前を付けるのが一般的で、私の父は「名前は両親が子供にあげられる最初のプレゼント」ということを言っていたので自分も含め日本人の「自分の子供に対する名前」には並々ならぬ思いがあるのだと実感しました。

うちの家族のような道教の伝統を重んじる家庭ではそういったことは全く無く、名前とは時期に応じて変えられるもの、というスタンス (これは比較的伝統的か台湾でも昔の考えを持った人に多いと思います。普通に外国人が出会う進歩的な台湾人はそうじゃない人の方が多い気がします)。私の台湾人妻の家族も20代の頃に既に名前を変えていて、「名前を変えてから運が良くなった」と言っている人もいます。

ちなみに、台湾ではコロナ拡大前にニュースになった「回転寿司チェーンで鮭が名前に入っている人は無料で寿司食べ放題キャンペーン」が原因で名前を「鮭魚丼」などのおもしろ名に変更する人が続出し、連日大きく報道されていました。

台湾では3回戸籍上の名前を変更できるらしいのですが、おもしろ名に変更した後に3回既に名前を変更してしまったと気づいた人がいるようです。それくらい自分の戸籍上の名前を変える、という行為は日本に比べて広く一般的に行われています。

私も台湾で結婚するときに、台湾での名前を自由に決められる機会がありましたが、結局日本での名前をそのまま使っています。日本人の中には台湾用に変更している人もいるようです。

産後は「坐月子」が何よりも優先される

産後は「坐月子」が何よりも優先されます。

「坐月子」についての詳細はこちらから。

台湾や中国では「坐月子」という出産後の女性をいたわりにいたわって回復させるという文化、慣行が存在します。古代では現在のように暖房もなく、きれいな水や食べ物も少なかったため、「髪を洗ってはいけない」と言われていたり、健康を保つために冷たい水を飲んではいけない (これは日常的に行われていたりする)、外出してはいけない、階段を登ってはいけないなどなどたくさんやってはいけないことがあります。この禁止事項は家庭や地域によっても違うかも。

ちなみに出産前には「自分の部屋の中でハサミや爪切りを使ってはいけない」「家具などを移動してはいけない」「重いものを運んではいけない(これは当然)」「縫い物をしてはいけない」などがあります。うちの妻(と私)は厳格にこの決まりを守っております。

現在は昔とは環境がかなり違っているので伝統的な「やってはいけないこと」は気にしなくてもよい場合が多いですが、うちの妻みたいに台湾的に信心深く伝統的なしきたりをできる限り守ろうとする人は今も多くのやってはいけないことを守る人もいます。

コロナの関係で2週間ほど子供に会えず

台湾での感染が拡大してきた頃での出産だったので、出産時にちらっと産まれた子供に会えたきり、2週間も子供に会えずでした。

妻と私が退院したのは出産から5日後だったのですが、妻の坐月子のために体を休ませることから子供は病院で1週間近く預かってもらうことになりました。日本だとあまり考えられないことで、けしからんと思ってしまう人たちもいそうです。私の場合は、コロナ予防のため面会が禁じられていたので母乳を持っていったりしても赤ちゃんを見ることすらかなわずでした。

産まれたばかりの子供に2週間も会えないので個人的には早く連れて帰りたい気持ちでいっぱいだったのですが、結果として出産後の妻の休憩と回復のために子供なしで過ごしてもらうことは正解だったと思いました。

台湾の病院では坐月子のために赤ちゃんを一定期間病院で預かってお世話をしてもらうというサービスが提供されていて、安くて1日につき数百~1000台湾ドルで赤ちゃんを預けることができます。ぐぐって調べてみたところ妻だけではなく、他の家庭でも一般的で出産直後はそうしている人も多いそう。

台湾北部や都市部にいる人達には「坐月子中心(センター)」という坐月子専門の宿泊施設で、赤ちゃんは専門のスタッフがお世話をしながら、出産後の女性が育児の諸々で消耗せず快適に回復できるようにする施設もあり、坐月子中心で産後2週間から1ヶ月過ごしてから家に帰る (育児に追われる日々に突入) という人も多いです。日本もそうなったほうがもっと色んな方面の人たちが楽になるのになぁと感じているところ。

出産時についての詳細はこちらから

空調と体感温度について

実際に妻が坐月子の状況になって、上記にあるような決まりもあるのですが、今回もう一つカルチャーショックを受けたのが、

  • 空調を使ってはいけない

というもの。

台湾の60代以上の人たちは暑さや熱さに対しての耐性がとてつもなく高いように感じます。暑い台湾でエアコンなしで過ごし何人も育ててきた人たちと今の自分たちでは気温の感じ方が違うことを文字通り肌で感じました。

赤ちゃんが病院から帰ってきたときには、妻のお母さんがいつも寝ている部屋(空調なし)で妻と一緒に過ごしながら赤ちゃんを世話すると言っていたのですが、赤ちゃんが帰ってくる前から私はそれには反対で熱さと湿気で赤ちゃんの健康が害されると必死に説きましたが、「お母さんはこの方法で4人も育てたから」と聞き入れられず、最初は不安な夜を過ごしました。

翌日の早朝、その部屋に様子を見に行くと妻が一言「太熱了」… 妻も実際にその部屋で過ごして暑さを実感し、赤ちゃんの体温も上がっていることがわかりその日のうちに空調がある妻と私の部屋に移すことになり一安心。

でも妻のお母さんお父さん的にはその時はあまり理解できないようで、私が空気清浄機と温度湿度計で室内気温と湿度をコントロールしているのにも関わらず「冷房ききすぎでいかん」と言われたりしたので「それはずっと空調なしの外と変わらない環境で過ごしていきなり部屋に入ってくるから体感温度低く感じるねん」と言っております。

ぐぐると科学に基づかない中華文化の子育て方法と坐月子の風習が関連して毎年一定数出産後の女性とその子供に重篤な症状が出るというニュース記事もあったので、全部それを妻に見せて頑張って理解させようとしたりで、ドタバタな子育て開始でした。とまぁ書いておりますが家族仲は良いので今後は大丈夫だと思います。

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