1940年代戦後の台湾を舞台にしたゲーム「夕生 Halflight」をプレイしてみた。昔の台湾を知って今を知ろう

ゲーム




夕生 Halflight

この前から地道に始めた youtube チャンネルの「台ぶらちゃん」がまだまだ再生数を稼げず悲惨な状態なのでゲーム解説やゆっくり解説動画をいくつか作ってどうなるか反応をみたいと思っています。

それで、どんなゲームが良いかな、どうせだったら台湾や中華文化がテーマのゲームだと台ぶらちゃんの方向性とも合致していていいなと思い Steam で探して見つけたのがこの「夕生 Halflight」というホラーファンタジー。

メディアやyoutube動画ではホラーゲームというふうに紹介されているが、実際はファンタジーでありパズルであり、ミステリーであり、歴史であり、深いテーマを扱ったゲームというメディアの形をとった芸術作品だった。

ゲーム開発者は雲林科技大学のもと学生で、この4人の学生が Unreal Engine (ゲームエンジン)の賞を取ったことで、卒業後もこの作品の開発に取り組み完成させて全世界でプレイできるようにしたものがこの「夕生 Halflight」である。

最近は便利な時代になって、Unity や Unreal Engine などゲームエンジンを使ってゲームを作ることで個人でも高クオリティのゲームを作成、公開できるようになった。この開発者のインタビューは以下の動画で見ることができるので興味がある人は見てみてください。

夕生 Halflight の開発者

自分としては、最近、去年亡くなった史明先生の日本語自伝「理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい」を読み、戦前戦後の台湾の生の様子を本の中から垣間見ていたのと、1940年代台湾家屋の雰囲気を残す台中の田舎の老街と呼ばれる区域に住んでいるのでこのゲームには惹かれるものがあった。

プレイするには

「夕生 Halflight」をプレイするには、Steam から検索して1500円ほどで購入してゲームをインストールする必要がある。

ある程度スペックが高いPCでないと画面の遷移がカクカクするのでご注意ください。私は最近高性能PCを買ったので余裕でした。

プレイ時間

完全攻略ではなく通しのプレイでエンディングまで4時間ほどでした。ストーリーと謎解きやパズルは軽快なペースで進んでいくのでやっていて退屈さはまったくないです。

ゲーム内のすべてのアイテムを取ると真のエンディングを見ることができるので、じっくりアイテム集めるプレイをするとプラス2時間程度というところ。

週末の息抜きや気分転換にゲームにはまり込みたい時にプレイするとよいかも。(息抜きというにはヘビーで気分転換でやるとこの世界に気分が転換されたままになるかもしれないのでご注意を)

コントローラーはXボックスのコントローラーが使い心地最高でした。軽くて滑らか。




夕生 Halflight のストーリー

世界観と歴史背景

舞台となる時代背景は1940年代、第二次世界大戦が終わりサンフランシスコ講和条約で日本の台湾における主権の放棄が決まり、1895年からの日治時代が終わり日本人が台湾から去り、数年後中国大陸での国共内戦から逃れてきた国民党の人たちが台湾の支配層になり、腐敗した政治や統治方法で多くの台湾人犠牲者を出していた頃。

1947年2月28日には白色テロという国民党政府が台湾の知識人や国民党に反発するものを一斉に虐殺と弾圧を行われた。ちなみに2月28日は現在は台湾の祝日になっている。

ちょうどこの日本が去り、中国国民党が台湾にやってきて大規模な力での支配が行われ常態化していた頃がこのゲームの時代背景である。

主人公や主人公家族、話しかけられる人々はみんな台湾語を話す。ゲーム中でも日本語と台湾語が混じっていて「おとうさん」「おかあさん」「秘密基地」などの日本語も飛び交っている。

ちなみに、台湾の歴史を少しかじった人は「この時代の台湾人はみんな日本語話せたんじゃないの?」と思う人もいるかもしれないが、日本語を話せるのは台湾全体でみると一部の限られた人たちだけ (年代的に)で全員ではない。当時の「上級国民」である日本人に近い経済力や土地を持っていて日本人学校に行っていたり、日本語での教育が完全に始まった年代であったり、日本と関わる機会が多かった都市部の人は日本語を話せる人が多い。

私の妻の父方の祖父は終戦時は15歳で日本語教育を受けていた世代で今もかなり日本語を話せるが、母方の祖母は90歳を越えていて1920年代生まれだが日本語は話せない。今私がいる倉庫兼事務所の向かいに住んでいる88歳のおばあさんも日本語は話せなくて台湾語だけ。

台湾語 (閩南語) は大陸からの移民であった主に福建省に由来をもつ人たちの家庭で話されていた言葉。このゲームをプレイするとちょっとした台湾語がわかるようになります。「きーくわい」= 「奇怪」(おかしい)とかこういう日本語の発音に近い形容詞など。日本語教育から文化に取り組まれた日本語 (オートバイ、アタマコンクリとか) と、もともとの福建省の言葉である閩南語の発音が、漢字が日本に伝わったころの発音と同じものがいくつかあり、一部日本語が古中国語の生きた化石みたいになっているのは面白い。↓は一部単語の発音比較動画。

ストーリー

物語は、主人公の夕生がいなくなった弟を探しに家をでるところから始まる。

家を出ると会う人みんなおかしな姿かたちでこの世界は現実の世界?と違和感を持つようになります。物語が進んでいくと鶏 (カラス?) の恰好をしたエイリアンみたいな敵のような人たちは主人公とは違い普通語 (大陸で主に話されている言葉) を話していることがわかる。

台湾に国民党がやってきてこの島が「中華民国」になってから公用語は「國語」つまり「中華民国の言語」である大陸の中国語になり、公に台湾語を話すと罰金や刑罰など処罰されるようになった。このゲームの時代背景では戦後の混乱期だと思うのでそのような決まりはできていないとは思うが補足として。

話を戻して、弟を探してパズルを解いたりして物語を進めていくうちに失っていた記憶の一部がだんだん戻ってきて、弟がいなくなり家族が亡くなっていることが示唆され、さてその後どうなっていくのか、この精神世界的な奇妙な世界から主人公の夕生は解き放たれるのか、というのがストーリーです。

下はゲームの一場面から。

プレイ開始後少ししたら出くわす人に言われる言葉、「思い出さなくてもいい、忘れられることも幸せだ」これは真のエンディングを見れば意味がわかる深いお言葉だったのだと後から気づく。

台湾好きな人なら心躍るような、廟や屋台的なものなど台湾の原風景的な世界で、台湾人と大陸からの人たちのメタファーな奇妙な生物の中で弟の痕跡を探します。

ゲーム中の日本語音楽 – はしりゃんせ

ちょうどこの上のシーンで背景音楽が当時の日本で流行っていたっぽい曲調の音楽で少し心打たれます。調べるとこのゲームのために独自で作ったもののようで、このゲームのストーリーや世界観にも合っていて感動した。以下のリンクから聞くことができるので興味がある人はどうぞ。

 

台湾の昔の街並み、家屋

↓は昔の台湾老街の街並みが残る迪化街の夜。

こういう雰囲気が好きな人で台湾の歴史や近代史に興味がある人でPC でゲームができる環境にある人はプレイしてみると良いかも。

迪化街の入り口。

迪化街の近く。

こちらは今住んでいる妻の実家近く。台中の海側の町にあり、家が昔の街並みを残した老街にあります。

こういう台湾の雰囲気が好きな人にはおすすめ。

ちなみに、このゲーム内に出てくる1940年代の家屋の中の床や媽祖の祭壇があったりするところや、にんにくがあったり、椅子の形など諸々が私が今住んでる妻の実家のグッズと酷似していたので、昔の台湾文化は今も脈々と受け継がれていることを感じた。

中文繁体字と簡体字のレビューを見比べてメタ視点的にこのゲームを生み出した歴史と現在を考えてみる

もっと深く楽しみたい人は、Steamのレビューを中国語で読んでみることをおすすめします。

簡体字レビューは大陸のユーザーのプレイ感想でほとんどすべてが「おすすめしない」になっていて何故敵である鶏のキャラが普通語を話していて主人公たちは台湾語なのか、とか字幕に簡体字がないとかその他感情的なレビューを散見できる。この時代の台湾の歴史を全く知らないままゲームをプレイした人が多いのだろうなと思う。

一方繁体字のレビューは主にポジティブなレビューがおおく、おすすめしないのレビューも建設的なコメントが多かった。

興味がある人は見比べてみてください。

 

また面白いゲームがあったらブログで共有します。

ちなみに、これに少しだけ似た要素を含む台湾人の文化的要素を含んだゲームに「返校」というゲームがある。こちらは本物のホラーゲームなのでプレイするか迷う。

 

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